大島薫展に行ってきました #大島薫展


夜になるといつも赴く、「ミッテラ」こと西心斎橋の日宝三ツ寺会館で、ひとりの写真家さんと呑み友だちになった。
お名前はならもと かずやさん。以下、皆から呼ばれている「ならさん」で統一する。
ミッテラでお見かけする機会はそんなにないけれど、酒席をご一緒する度、かわいらしい女の子を独特の世界観で写し取った写真をいつもiPadで見せて頂いている。

そんなならさんがある日ツイッター上にあげた1枚の写真に目が留まった。
すんごいかわいらしい子。栗色の長い髪がきらきらしていて、小さい顔、くりくりしているけど意志の強そうな瞳。
海辺で撮っているのらしい。手に持っているのはセルフポートレート用のリモコンかな。上半身裸か。大胆だな……え?
「これ男性?」
大島薫(おおしま・かおる)という名前を初めて知ったのは確かこの時だったと思う。

ググって一般的な人となりを知ることが出来、この人にすごく興味がわいてきた。
所謂「ニューハーフ」というのとは少し違うし、そもそもあまり歪んだオーラが感じられない。
大阪にも時々来るという話だけど、それ待っていてもなぁ……
そう思っていた折も折、ならさんが写真で参加される「大島薫作品展」が名古屋で開かれるとのこと。
渡りに船、と近鉄特急に乗って名古屋に乗り込んだ。

IMG_3744

東山線で一駅向こうの伏見駅まで向かい、鶴舞線に乗り換え、また一駅向こうの大須観音駅に到着。
Googleマップと首っ引きで大須の街を歩き回り、予定から20分ぐらい遅れて会場であるロジガレモノコトに到着。

IMG_3752

既にすごい人出。

IMG_3760

お客さんの応対に追われているならさんに軽くご挨拶を済ませた後、受付にいた女性(この人も大阪でミッテラによく来るらしい)にもご挨拶。
「私何しましょ?」
「そんなら2ショット写メやらチェキやらを撮ってあげてもらえます?」
見回してみると、人でごった返す狭い部屋の中に、ひとりを囲んだサークルがうっすらと出来あがっている。
くだんの女性が呼びかける。
「薫くーん! ならさんが言うてた、お手伝いの人が来てくれたから! 写メ撮ってもらって!」
そのサークルの中心にいた人物が、女性にしては低く、男性にしては高い声をあげる。
「わかったー」
大島薫だ。びっくりするぐらい綺麗でかわいいが、びっくりするぐらい近寄りがたさがない。実に自然体。
「あの、ちょっと待ってもらってるんで早速撮ってもらっていいですか」
彼にそう言われて我に返り、前で緊張気味に立っている女の子からiPhoneをお借りする。

IMG_3759

それから……午後3時ぐらいまでほぼぶっ続けで写メやらチェキを撮っていた。

スマホの画面や、インスタントカメラのファインダー越しに、大島さんと並んで写る人々の表情を、ずっと見ていた。

普段から懇意にしているのか、気のおけない雰囲気で仲良く並ぶ人。
「ちょっとやって欲しいことがあるんですけど」とポーズやらアイテムやらあれこれ注文をつけている人。
「綺麗、綺麗」とうわごとのように言いながら満面の笑みを浮かべる人。
憧れの人を目の前にして、撮影終了後に感激のあまり真っ赤になって泣き出す人。

IMG_3763

恐ろしいことに、大島さんはそんな時も嫌な顔ひとつせず、終始気さくにファンの人たちと仲良く写真に収まっていた。
サインを求められたらサインもし、コーヒーを淹れ、ハグもする。
特に泣き出しているファンの人たちを横で見ていて、ちょっともらい泣きしそうになった。

「薫くん、普通に中をうろうろしてるから、会場を覗いたら本人おった! ってびっくりしてまう人もおるんちゃうかな」
ならさんが笑いながらそう言うもんだから、入口のところを覗いてみると……なるほど、確かに入口の前でもじもじしている人がいるな。
「どうぞ? 今結構空いてますよ?」
そう声をかけてあげると、おそるおそる中に入ってくる。
「こんにちは!」
背後から大島さんの声が飛ぶと、声にならない声で「ヒッ」というのが聞こえた気がした。

遅いお昼休憩を頂いて戻っても、まだ会場は人の山。

IMG_3748

肝心の作品紹介をしていなかった。
くだんのならさんをはじめとした写真家の方々が、それぞれの視点、それぞれの切り口から大島薫という被写体を切り取って写真に収めたり。
ショートフィルムがあったり。鉛筆画があったり。
多分彼自身に色んな要素があって、懐の広さがあるからこそ、参加されたクリエイターの方々の自由な発想に委ねられるんだろうな、と思った。

結局写メ&チェキは会場が閉まる20時過ぎまで延々と続いた。
勿論大島さんは疲れも見せず、終始にこやかに、ファンひとりひとりに気さくに話しかけて交流を深めていた。
私もだんだん慣れてきて、緊張気味のファンに「硬いな。もっと笑おうか」と声をかけられるようになってきた。

大阪に帰る終電の関係で慌ただしく会場を後にしたもんで、大島さんにちゃんとご挨拶できなかったのが心残り。

帰りのアーバンライナーの中で「彼があそこまで人を引き付ける理由は何だろう?」と考えていた。

色んな理由があるだろうけど、総じてみんな大島薫に「期待」をしているのだと思う。
「期待」の中身は様々であろう。
どこか生きづらさを感じている人。
自分の今の状況に不満があるけど、自分ではどうしようもない人。
誰にも言えない悩みを抱えている人。
そうした人たちが、大島薫に出会った。
恐らく自分の想像もつかない紆余曲折を経て今そこに立っているのに、どうしてあんなに悠然としていられるんだろう、あんな風になれたらいいな、と思うのではないだろうか。
彼が自分に何かをしてくれるわけではない。そんなことは分かっている。
でも、彼みたいな佇まいを、自分がもし出来たんだとしたら、自分の今いる場所から見える景色が、ほんの少しでも変わるんじゃないか。
きっと、そういうささやかな「期待」を、彼にしているのではないだろうか。

そして多分、彼はそういう「期待」を引き受ける覚悟をしているんだと思う。
でなけりゃ、あのロジガレモノコトに会期中ずーっと滞在して、ずーっと写メやらチェキやらをにこやかに楽しむなんて芸当が出来るわけがない。
「カリスマ」って、そういう覚悟を決めた人に備わるのかも知れないな。

最後におまけ。
帰り間際に、ならさんに進められてワシも写メを撮らせてもらった。
同じ男という生き物を名乗るのが恥ずかしくなる写真である(白目

IMG_3767

大島さん、ならさん、ありがとうございました。
ミッテラに来られたら呑みましょうねん。