漫画「BEASTARS」:得体の知れない動物、そして人間


自分の好きな漫画を他人に薦める際、「どういう漫画?」って訊かれて答えるのに重要となるのが「ジャンル分け」だ。
「幕末を舞台にしたとある剣士をめぐる冒険活劇」とか「中世のフランス王室での王妃と執事の許されざる恋愛劇」とかそういう感じ。
ジャンルを分けること自体に作品を楽しむ要素は希薄だが、人とのコミュニケーションの取っ掛かりにはなると思う。

その点、今回紹介するこの「BEASTARS(ビースターズ)」という作品は、本当どう形容したらいいか、果たしてどういったジャンルに属する作品なのか、他人に説明する時にいつも考えてしまう。

2016年9月から週刊少年チャンピオンにて連載されている。作者は板垣巴留(いたがき・ぱる)。女性である。
本作に人間の登場キャラクターは一切出て来ない。全員、擬人化された動物だ。

「チェリートン学園」という中高一貫の学校が舞台。全寮制で、肉食獣と草食獣が共に暮らしながら学校生活を送っている。
ある日、演劇部に所属する草食獣アルパカの生徒「テム」が何者かの肉食獣に殺された。犯人探しが始まる中、それまで部内、いや校内でくすぶっていた肉食獣と草食獣との確執も一気に表面化してしまった。
主人公であるハイイロオオカミの「レゴシ」は、テムと同じく演劇部に所属する。大型の肉食獣なのに口下手で繊細な性格のせいで、テム殺しの犯人という汚名を着せられる。疑い自体はすぐに晴れたが、校内では肉食獣と草食獣とのわだかまりは残ったままだ。
レゴシは、演劇部の看板役者であるアカシカの「ルイ」に呼び出され、「僕に協力しないか」と持ちかけられる。彼の意図をはかりかね思い悩むレゴシが部屋を出ると、草食動物の気配を感じ取る。本能を呼び起こされ、衝動のまま草食動物に手をかけると、それは園芸部所属のドワーフ種のウサギの少女「ハル」であった。

まず本作の世界観や登場キャラクターの性格には、肉食獣/草食獣の特性を巧みに織り込んである。
レゴシをはじめとした肉食獣と、ルイをはじめとした草食獣とは、(時には肉食獣同士、草食獣同士であっても)確執や対立を繰り返す。やがて理解、友情、そして愛情へと進んでいくのだが、いつも読み手の予想を裏切った意外な展開に向かう。
そして何より、動物同士の衝突の様には、読み手である人間にも深く理解できる「説得力」があるのだ。荒唐無稽な「動物の擬人化」にリアリティが感じられる。
だから私は、ズレた返事しか出来ないレゴシに苛立ちつつ彼を放っておけないハルを微笑ましく思うし、レゴシとルイの「邂逅」の様に涙してしまうのだ。
残酷な描写も少なくないが、柔らかいタッチの絵柄のせいもあってか、どこか温かみを感じる。

ここまで色々書いても、この「BEASTARS」がどういうお話か、一言で表すのは難しい。
もしかしたら、この「得体の知れなさ」こそが本作の魅力なのかも知れない。
今秋からはTVアニメの放映も始まる。この「動物たちの底知れぬヒューマンドラマ」を是非体験して頂きたい。