「鬼滅の刃」の魅力:悲しくも優しい鬼退治


不肖からふね、「週刊少年ジャンプ」は毎週チェックしている。
日本の漫画はジャンルも購読層も多岐にわたるが、「メジャーなエンターテイメントとしての漫画」の最先端を知るには、やはりジャンプだと思う。
私が単なる「漫画好き」なのは勿論だが。

最近私が愛読しているのが、今回紹介する「鬼滅の刃(きめつのやいば)」という漫画である。

あらすじを紹介しておく。
時は大正時代。とある村に現れた鬼が民家を襲う。長男・竈門炭治郎(かまど・たんじろう)と、長女で妹の竈門禰豆子(かまど・ねずこ)以外は惨殺され、その禰豆子も鬼の血を混入させられ鬼と化す。
凶暴化した妹に襲撃される炭治郎の元に、一人の剣士・冨岡義勇(とみおか・ぎゆう)が現れ、禰豆子に刃を向ける。
「妹を人間に戻す方法は、俺が必ず見つける。だから妹を殺さないでくれ」と炭治郎は嘆願するが、義勇は「鬼となった人間は殺すしかない」と聞き入れず、禰豆子を刺し殺そうとするも、炭治郎と禰豆子の予想外の行動に兄妹の絆の存在を認め、剣を収める。
炭治郎と禰豆子は、義勇の導きで鱗滝左近次(うろこだき・さこんじ)という男の元を訪ねる。鱗滝は鬼殺隊の剣士を育てる育手(そだて)であった。炭治郎は妹を人間に戻すため、そして家族を惨殺した鬼である鬼舞辻無惨(きぶつじ・むざん)を倒すため、鱗滝の下で剣術の修行に入る。
2年後、最終選考に合格し鬼殺隊に入った炭治郎は、人間を守る鬼となった禰豆子や、小心者だが神速の剣を使う我妻善逸(あがつま・ぜんいつ)、そして猪の面を被る野生児の嘴平伊之助(はしびら・いのすけ)といった仲間とともに、鬼舞辻無惨の手下である鬼との激烈な戦いに身を投じていくのであった。

この漫画の魅力は数多い。
圧倒的な画力はないものの、唯一無二のユニークな絵柄。
炭治郎を取り巻く、「柱」をはじめとした個性的なキャラクターが揃う鬼殺隊の仲間たち。
基本的にシリアスで過酷な内容だが、絶妙なタイミングで混ぜられる笑いの要素。

だが、やはり一番の魅力は主人公・竈門炭治郎であろう。
鬼となった禰豆子に襲われているのに、家族と妹を守れなかった自分を責めながら「鬼になんかなるな! 頑張れ!」と涙ながらに訴える……
最終選考の最中、初めて自らの剣で鬼を倒した時、快活に喜ばず「鍛錬は無駄じゃなかった」と安堵の涙を流し、鬼の魂が成仏するよう祈りさえする……
とにかく、炭治郎は優しい。
自分が強くなる目的は「あくまでも妹を人間に戻すためだ」ということを絶対に忘れない。正義を振りかざしたり、自らの剣に酔い痴れたりすることもない。
「優しすぎて戦いに向いていない」と当初鱗滝は心配していたが、修行と戦いの中で甘さを克服し、次第に成長していく。
そして自分ひとりの力の限界もよく分かっていて、仲間たちを心から信頼する。
善逸も伊之助も、炭治郎の馬鹿正直な真っ直ぐさに戸惑いつつも、何だかんだと手を貸すようになるのだ。

残酷な描写も少なくないストーリーだが、展開に「優しさ」が垣間見えるのも見逃せない点だ。
鬼舞辻無惨によって血を分け与えられた人間が鬼となるのだが、過程は様々であり、悲しい事情を抱える鬼もいる。
無論その事情で人を襲うことが正当化されるわけではないが、炭治郎たち鬼殺隊に倒される時、鬼は今際の際に人間だった頃の記憶を思い出し、何かしら救われた気持ちのまま死んでいく。
つまり鬼殺隊は、鬼を退治するのと同時に「かつて人間であった魂を救済する」側面もある。
このことが、単なる勧善懲悪の枠を超えた深みと奥行きを物語にもたらしているのだと思う。

2019年4月よりテレビアニメの放映も始まっている。
とんでもなく美しい映像と、原作に忠実かつ丁寧な脚本、そして声優陣の素晴らしい熱演に(炭治郎役の花江夏樹さんが本当に素晴らしい!)、私は毎週魅了されている。
放送局はこちらに。オンデマンド配信も行われている。是非チェックして頂きたい。

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