吉澤嘉代子から目を離すな(2) – 「泣き虫ジュゴン」:生真面目な魔女 #吉澤嘉代子


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前回取り上げた「ストッキング」の次に、私がYouTubeで耳にしたのが「泣き虫ジュゴン」という楽曲である。
インディーズ1stミニアルバム「魔女図鑑」所収なのだが、現在発売終了しているため、Amazonでの価格がとんでもないことになっている。
リリックビデオをご覧頂こう。

ジュゴンと聞いて関西人としてまず思い出すのは、小学校の修学旅行で訪れた、三重県鳥羽市にある鳥羽水族館である。
開業60周年を迎えた老舗水族館だが、日本で唯一ジュゴンを飼育展示している水族館としても有名である。2011年に亡くなるまでオスの「じゅんいち」は実に31年間も同館で飼育されていたという。現在はメスの「セレナ」が一頭だけ飼育されている。

ジュゴン「セレナ」

思慮のない小学校の頃、修学旅行のしおりに「人魚伝説のモデルであるジュゴンを見に行きます」と書かれてあったので、意味もなく期待をして鳥羽水族館に行くと、自分がイメージしていた人魚とは似ても似つかない風体に、少なからずショックを受けた記憶がある。
どこか愛らしくて憎めない表情をしているけれど、気弱そうで、何だか目が垂れ目になっていて、いつか泣き出しそうな雰囲気すらある。

ああ、なるほど。吉澤嘉代子も似たようなことを感じて、この曲を作ったのかもなと納得した次第。

彼女は魔女になりたいと願うのだけど、自分はまだジュゴンなのだろうなとも感じているのかも知れない。実際のジュゴンの生態はさておき、イメージとしてのジュゴン。
生まれた海水の冷たさに驚いて心がふるえて泣いてばかりのジュゴン。
だけど伝えなきゃ何も変わらないことも分かっている。
だから歌う。でも怖くて泣いてしまう。

そんな堂々巡りをしている歌なのではないか。

両極端な楽曲のように思えるが、これもまた吉澤嘉代子自身なのだろう。
亡くなって20年が経過したhideさんの名曲でたとえるならば、「ストッキング」は「Rocket Dive」で、「泣き虫ジュゴン」は「ピンクスパイダー」なのではないか。
(じゃあ「ever free」は何なのか? それは後日また)

様々な、そして不思議な楽曲を展開している彼女だが、「妄想系」と捉えられる向きに、私はどうも違和感を覚えてしまう。的外れとは思わないけれど。
何というか、根本的に生真面目なのではないか。いわば「生真面目な魔女」

因みにこの「泣き虫ジュゴン」、先頃出たメジャー1stアルバム「箒星図鑑」において新録されており、PVも作成されている。
前掲の初期バージョンとの違いを味わって頂ければ幸いである。