こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話


昨年、2018年は結局1本も映画を観に行かなかった。
一昨年に観た最後の映画が「探偵はBARにいる3」であった。
狙った訳ではないが、1年ぶりに観に行った本作も主演は大泉洋である。

実在した筋ジストロフィー症患者の鹿野靖明(しかの・やすあき)氏の生涯を描いた作品である。
幼少の頃から筋ジストロフィーを患い、首と手以外は動かせずずっと車椅子生活。
他人の助けなしでは何もできない状態にもかかわらず、病院を飛び出し、自宅に大勢のボランティアを集めて自立生活を送っている。
鹿野を演じるのは勿論大泉洋。ボランティアの中のひとりで医大生の田中を演じるのが三浦春馬、その田中の恋人で、ひょんなことからボランティアになってしまう美咲を演じるのが高畑充希。

鹿野はとにかくわがまま放題。暴君のようにボランティアをこき使う。
大人しい田中は鹿野に翻弄されっぱなしだが、美咲は反発する。
それが却って鹿野に気に入られ、美咲はデートに誘われる。
田中は、美咲が自分の彼女であると鹿野に言い出せないまま、「鹿野さんを元気づけてあげたいんだ」と、美咲にデートを受けるよう頼み込む……

作中、鹿野は何度か生命の危機に陥るが、その度、奇跡的に一命を取り留める。
ずっと彼についているボランティアは内心絶望的な気持ちになっていたと思うが、いつもゲラゲラ笑っている。まるで自らの絶望を覆い隠すように。
そして何となく気づいた。これは鹿野自身が、自分の絶望を覆い隠すように周囲を笑わせているのだ、と。
物凄く強い人だったんだなと思う。
傍若無人のわがまま放題をされても、そんな彼を皆分かっているから、結局許してしまうんだろう。

ティザー映像で想像していた通り、全般的に湿っぽさは殆ど無く、とても明るくカラッとした映画の作りになっている。
大泉洋は恐らく事前に筋ジストロフィーや鹿野靖明氏について相当調べあげた上で本作に臨んだと想像する。人工呼吸器を付けた状態での会話の「言葉の切り方」など、リアルにこんな感じだったんだろうなと感じた。演技自体は抑え気味だったが、それが本作のトーンにも合っていたと思う。
三浦春馬は、「周囲の期待を裏切りたくなくて本心を圧し殺す優男」をよく体現していたと思う。だからこそ、美咲を問い詰めた時や鹿野に突っ込まれた時に見せた「エゴ」がより映えたと言えるのではないだろうか。
高畑充希。彼女の演技をちゃんと見たのは初めてだった。木村拓哉にせよ内山理名にせよ「ぼそぼそ台詞」が上手い俳優は良い役者という自論があるのだが、彼女も今回その括りに入ったと思う。良かった。
鹿野の母親役である綾戸智恵の熱演ぶりが素晴らしかった。
あと、看護師役の韓英恵が美しかった。(最後の〆がそれかよ)