「空きっ腹に酒」というバンド:屋根裏から来た僥倖


出会ってから2年ぐらい経って、音源もほぼ全部持ってて、ライブにも何度も足を運んでいるのに、このバンドを文章でちゃんと書いてなかったことに最近気づいた。
今回は「空きっ腹に酒(すきっぱらにさけ)」というバンドのご紹介。

彼らに出会ったのは2016年に京都の今出川で開かれた「ボロフェスタ」だった。
お目当てだったバンドはトップバッターで出演を終え、他の有名どころのアーティストの出番まで随分時間があったので、どれ色々見て回ろうかと軽い気持ちで次の出番のステージに歩いていった。
「空きっ腹に酒」? なんかすごい名前のバンドやな。あ、出てきた。うわギターの人、髪真っ赤やん。ドラムの人、えらいあったかそうな帽子かぶってるやん。ボーカルの人、なんか不機嫌そうやな…
私が彼らに抱いた第一印象はだいたいそんな感じである。

だが、演奏がはじまると印象はガラッと変わった。
え、ほとんど歌ってへんやん、ラップばっかり。でもなんやろ、なんか魅惑的な声やな。うわ、演奏上手い。ギターがすごい独特の音鳴らしとんな。
2曲めの「Pa」のサビで「パーティー!パーティー!パーティー!」と歌い出すと、前列にいたファンは全員左右に両手を突き出して踊りだした。
ラップというけどファンクだけではない、でもただのロックンロールでもない。なんじゃこの音は。なんじゃこのバンドは。
初見で激しく惹かれた感覚はなかったのだが、気がつけば過去のアルバムを買い揃え、翌年の心斎橋CONPASSでのライブのチケットを取っていた。

メンバーについて改めて紹介しておく。敬称略で失礼。
ボーカルは田中幸輝(たなか・ゆきてる)。すべての作詞とフロウを担当。メンバーは元よりライブの観客にも毒づくが、不思議と好かれるのはきっと生来の優しさをみんな分かっているからだと思う。ライブ終盤に見せるフリースタイルはいつも見事。
ギターは西田竜大(にしだ・りゅうた)。作曲を担当。バンドマスターであり、バンドサウンドのオーガナイザーでもある。赤く染めた髪と、それ以上に独特の音と強いピッキングで響かせるギターが印象的。イベントでカレーを振る舞ってもくれました。
ドラムはいのまたふくと。ご実家は名のあるちんどん屋で、自身はアコーディオン奏者でもあり、バンドより先にレコードデビューも果たしている。私がときたま赴く某バーで時たまバーテンダーとして立っている。
ベースはシンディ。一番後に加入。このバンドはベースがなかなか安定しなかったのだが、彼の加入でようやく落ち着いた。凄腕のスラッピングを誇るが、話してみると腰の低い方です。

空きっ腹に酒の魅力は、まずは何とも形容しづらい独特のサウンドである。
西田竜大のリズムカッティングと弾けるようなリフが強烈なギターと、シンディのうねるスラッピングベースとが横軸として響き、いのまたの、明るくポップだが正確なリズムのドラミングが縦軸を貫く。その音の海を、関西弁混じりで縦横無尽に駆け回る田中幸輝のラップと(ちょっとだけ)歌。

音源でも十分ユニークなのだが、ライブではその数十倍カッコよくなる。
一例がこちらの動画。(ベースはシンディじゃなくてサポートメンバーだけど)

これはTV番組の公開録画だけど、実際のライブだともっとえげつない。汗だくで煽り、叫び、踊らせる。
バッキバキに響くミクスチャーサウンドと田中幸輝のフロウとが絡み合って、気がつけばこちらも汗だくになって踊り出してしまう。

2007年に活動開始して今年で12年目。
ファンとして、もっと色んな人に知られて欲しいという気持ちは勿論あるけど、下手にメジャーデビューして「売れ線」にさせられてしまうのも違う気がするし…複雑である。

最後にオススメの3曲をあげておく。興味をもった方は是非ライブハウスへ。