ラ・ラ・ランド(原題:LA LA LAND)


久しぶりの投稿です。

決して敬遠していたわけではないが、個人的にミュージカル映画には縁遠かった。
触手を伸ばす気になったのは、監督の名前だった。

デイミアン・チャゼル。聞き覚えのある名前と思って調べてみたら、「セッション」の監督だった。
詳細はリンク先に譲るが、音楽、殊にジャズへの狂気にも似た深い愛情にあふれた怪作だった。
自然、次回作である今作にも期待して、映画館に足を運んだのである。まさかミュージカル映画だとは思わなかったけど。

ストーリーとしては実に単純。
ロサンゼルスに住む、女優を目指してオーディションを受けては落ちる日々を過ごすミア(エマ・ストーン)と、ジャズが疎んじられる昨今を憂いジャズの良さを知ってもらうべく自分の店を持つことを夢見るセブ(ライアン・ゴズリング)との恋愛を描いた映画。

劇中に流れる音楽の大半はオリジナルで、メインとなるメロディが多分4つか5つあって、それが何度かリフレインされ、「ここでこのメロディがまた…!」ということが何度もあった。
アレンジは、時にはゴージャスに奏でられたり、時にはピアノだけで静かに響いたり。
その「押し」「引き」が実に絶妙で、単純なストーリーなのにぐいぐい引き込まれるのだ。

この映画に出てくるキャストの大半は、恐らくは「本格的なミュージカル俳優」然とした歌唱とダンスは出来ないと思う。
たとえば、ライアン・ゴズリングにはヒュー・ジャックマンのような圧倒的な歌唱力はないし、エマ・ストーンにはアン・ハサウェイのような鬼気迫る絶唱は望むべくもない。どちらも「レ・ミゼラブル」を引き合いに出しているわけだが。
でも、それは多分チャゼル監督が狙ったもので、あくまで普通のドラマの中に音楽と歌をマッチングさせようとしたのではないだろうか。
その狙いは奏功していると思う。劇中に「iPhone」や「トヨタ・プリウス」が出てきているところからしても、実に「今」の時代に物語を置くことが出来ている。
そしてそんな現代であっても、夢を追いかけることの難しさ、喜び、悲しみはそんなに変わることがないという当たり前の事実を、とんでもない分量の労力で描き切った、いい映画だと思う。

最初は「眉毛が太いなぁ」って印象しかなかったエマ・ストーンだが、ストーリーが進むたびにどんどんチャーミングに、魅力的になっていった。オスカー獲得も当然。
ジョン・レジェンドは後からクレジットを見て「ああ、この人?!」と分かった程度の知識である。ごめんなさい。
しれっと「セッション」の鬼教師・フレッチャーを演じたJ.K.シモンズが出てたのはっくりした。
そして、この映画で一番心に残ったのはライアン・ゴズリングである。猛特訓して臨んだジャズピアノの腕前もさることながら、意地っ張りで愚かだけど愛する人のことを想い続ける佇まい。本当に素晴らしかった。

ネタバレは嫌なので詳しくは書かないが、ラストシーンのセブの表情を、絶対に見逃さないで欲しい。私は思い出すたびに胸が締め付けられる。
…それでも多分、あと2回は観てしまうと思うけどね。